その開かずの広間に、まだ夜も明けきらぬときに向かう。

 じつは、表側は鉄の扉で外界とを隔てているけれど、開かずの間には別に隠し扉がある。そこは、わたしたちの寝室に通じている。

 ラインハルト曰く、「昔の皇帝や皇族たちが、有事の際に寝室から奥の広間に逃げこみ、隠れてやりすごす為につくったのだろう。当然、隠し扉のこともだれも知らない。だから、宮殿の使用人たちは、まったく使われていない広間だと思っているはずだ」、ということらしい。

 ちなみに、隠し扉へと続く寝室側の扉は、主寝室の本棚のうしろに隠されている。