「彼女は、訳があって妻になった。チカ、だ」

 老紳士は驚いた様子もなく、わたしにやわらかい笑みを浮かべた。それから、ラインハルトのときと同様にうやうやしく頭を下げた。

「皇妃殿下。執事長のヴォルフ・ランケでございます。この度は、おめでとうございます。使用人一同を代表いたしましてお慶び申し上げます」
「ありがとうございます。チカ・シャウマン。いえ、チカ・ザックスです。よろしくお願いします」

 ヒヤヒヤものだわ。