「だが、彼女のせいだけではない。おれも彼女が苦手だった。嫌いというわけではない。ただただ苦手だった。貴族子息や官僚たちに媚びを売ったり遊んでいることは知っていた。それでも歩み寄りさえすれば、気にかけさえすれば、違う関係になったのかもしれない。だが、おれはそうはしなかった。彼女を放置し、関わろうとしなかった。おれに非があるのだ」

 唯一の救いは、二人の子に恵まれたことだ、と彼は付け足した。