「いまにして思えば、気になったり調べてみようとしたことじたいが何か虫の予感のようなものがあったのかもしれません。それはともかく、バーデン帝国で陛下、というよりかはクラウス様と出会い、いっしょに旅をするうちにこれまでとはまったく違うと確信しました。いつの間にか、クラウス様に魅了されてもいました。クラウス様に気づかされたり励まされたりしたことが、クラウス様を慕い、想いを抱くようになった要因です。だから、クラウス様と別れることがどれだけつらかったことか。そのときにはわからなかった感情が、別れる直前になってどういう類の感情なの理解しました。もっとも、そのときにはもう遅かったのですが」