ほんとうは、ある程度偽ったあとに正体を明かすつもりだった。だけど、正体を明かしたら嫌われてしまう。二十五歳も年長で、荒くれ将軍で、しかも「獅子帝」などと怖ろし気な異名までついているおっさんである。そんなおっさんを嫌ったり気色悪がることはあっても、慕うようなことなどまずありえない。ましてや、強面のおっさんの妻になってそのおっさんを愛そうなどとは、バーデン帝国軍が他国の軍に敗れることくらい考えられない。
そんな奇蹟、自分に起こるわけがない。
皇帝は、そう結論付けた。
そんな奇蹟、自分に起こるわけがない。
皇帝は、そう結論付けた。

