「あ? いや、そういうことなのか?」
「陛下、ほらはやく。リタとゾフィの言葉がぜったいなことはおわかりですよね? あなたが従わねば、あとでシュッツとおれに災厄が降りかかります」
「ジークの言う通りです。ぼくらの為にも、義母(はは)上をギュギュギューッと抱きしめて下さい。ほらっ」

 ジークに続いてシュッツが言い、二人は同時にクラウスの背中をドンと押した。

 ドンと押すというのは、物理的にである。

 その不意打ちに、クラウスはこちらにふっ飛んできた。

 彼は、かろうじてわたしのすぐ前で足を踏ん張って止まることが出来た。