「あのね、これは人が死ぬ時の話なの」


横でうるうるしているカエデちゃんを無視して、サクラちゃんが話し始めます。


「聞いたことあるかな? いわゆる臨死体験報告ってやつなんだけど……。人ってね、死ぬ瞬間に光を見るらしいの――」

「光――?」

「そう、光。その光がね。死んだ人をゴクラクってところに連れていっちゃうんだって。その光の正体ってのが『アミダさま』なんだって」

「なんだか気味悪ィ話だなあ」


アオイちゃんは顔をゆがめて悪態をつきました。

強がっていますが、彼女はカエデちゃんに負けず劣らずのこわがり屋なのです。


「や、やだ、こわいよう……」


一方のカエデちゃんは素直にこわがっています。


「でもね。アミダさまは誰のところにでも来るわけじゃないの。アミダさまが来るには2つの条件があるの」

「条件――?」

「その1つはね。この話を聞いて、アミダさまのことを信じてしまうこと。アミダさまはね、その存在を信じる人全てのところに現れるのよ」

「え、やだ……、あたし、もう信じちゃったよ……。アミダさま来ちゃうの……? なんで、そんな話をするの。ひどいよ、サクラちゃん……」


カエデちゃんは瞳に涙を貯めています。

アオイちゃんも青ざめた顔でぶるぶると震えていました。

私はそんな二人が少しかわいそうになってきたので、慰めるように言いました。


「大丈夫よ、カエデちゃん。だって、もう一つ条件があるんだよね、サクラちゃん?」

「そうね。リョーコの言うとおり。もう一つ条件があるの。それは、ある呪文を唱えること……」

「じゅ、もん…………?」