月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。


「──うん……っ! 私もトールが好き……っ! ずっと好きだったの……っ!」

 だからティナも、心からの想いをトールに伝えた。
 記憶を失くす前も、失くした後も、ティナはトールが、トールだけが好きだったのだ。

 この先何があってもその想いだけはずっと、ティナの胸に残り続けるだろう。

「ティナ……っ!!」

 ティナの返事に感極まったトールがティナを抱きしめた。
 ティナもトールの背中に手を伸ばし、ぎゅっと抱きしめ返す。

 ようやくお互いの想いを伝え合うことが出来た二人を、光を満たした月が照らしていた。
 そして月を司る大精霊ルーアシェイアが、そんな二人に祝福を贈る。

《──我らの友に、光あれ》

 ルーアシェイアの祝福は聖なる光となり、ティナとトールの周りを明るく照らし出す。
 すると、光を浴びた土から芽が顔を出し、あっという間に成長して次々と蕾を開いていく。

「わぁ……っ!!」

 気がつけば、月下草があたり一面に咲き乱れていた。
 それはティナがずっと思い描いていた風景そのもので──。

 夜空を見上げれば、光を纏った精霊たちが嬉しそうに空を舞い、月下草の香りを運ぶ風が、いたわるように二人の頬を撫でていく。そして大地が二人を、月下草の淡い光で優しく包み込んでいる。

 まるで世界の全てが、祝福してくれているような光景に、ティナとトールは笑い合い、喜びながら、永遠を誓うのだった。