月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 今、目の前に広がる美しい光景は、ティナたちが精霊たちに協力した結果だとルーアシェイアは言う。

 ──ティナが毎日、欠かすことなく限界まで神聖力を分け与え、起こした奇跡なのだと。

 生まれたばかりの精霊たちは、まだ人の形を成すことは出来ないらしく、光の塊の姿だった。
 もちろん言葉も聞こえないけれど、この世界に生まれ喜んでいることは、すごく伝わってくる。

 精霊たちの喜びが、まるで歌のように森中に響き渡ると、その歌に呼応するように空気が震える感覚がした。
 きっと、この森に存在するすべての生きとし生けるものが、精霊の誕生を祝福しているのだろう。

《其方には感謝している。礼をしたいのだが、望むものはないか?》

 無事精霊の誕生を見届けたルーアシェイアは、ティナにお礼がしたいと言う。

「あっ!! あります!! 望むものあります!!」

 ここへ来てようやく、ティナは本来の目的と、自分が望んでいるものを思い出した。

 ティナの望み──それは、月下草の栽培方法を知り、両親が残した種を育てることだ。