まもなくティナは王国を離れ、隣国のクロンクヴィストへ旅立ってしまう──だが、ベルトルドはしかし、と思う。
今回の婚約破棄、称号剥奪に学院の退学、そして冒険者登録のタイミング。更に都合よく現れた元級友──。
ベルトルドは、これらの出来事が同時に起こる確率はどれほどだろうか、と考える。
(まるで人智を超えた大いなる意志が、ティナを導いているようだ……)
聖女ではなくなったといっても、それは称号を剥奪されただけに過ぎない。
第一王子フレードリクも勘違いしているが、称号があるからといって聖女の力が使えるわけではないのだ。
そういう意味ではティナの本質は変わっておらず、その力も失ってはいない。それは、未だに創造神ラーシャルードの寵愛を、彼女は一身に受けているということだ。
新しく聖女とされたアンネマリーには可哀想だが、しばらくはティナのためにもお役を頑張っていただこう、とベルトルドは僅かな同情を抱きながら思う。
それからベルトルドは安心して愛娘を送り出すために、快適に旅が出来るよう職員たちに最善の装備を準備させるのであった。



