月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「ルシオラにはいつも助けられているよ。ヒントもたくさん教えてもらったしね。それだけで十分だよ」

《うぅ、トールぅ〜〜っ!》

 トールに励まされたルシオラが頭に飛び乗った。もし人の姿だったなら、しがみついているように見えるだろう。

《ほんと、トールってば身内にはすっごく優しい……って、あれ?》

 トールの頭上で跳ねていたルシオラの動きがピタッと止まる。

「どうした?」

 さっきまで賑やかだったルシオラが黙ってしまう。何かの気配を感じたのかもしれない。

《あのね、ずっと向こうの方に魔力を感じたの》

「魔力?! もしかしてティナの?!」

《ティナの魔力かどうかは、ここからじゃ遠すぎてわからないけど……》

 今いる場所から魔力を感じた場所まで、かなり距離があるという。

「方角はわかる? とりあえずその場所に行ってみよう」

《うん! こっちだよ!》

 ルシオラに誘われ、トールは魔力の持ち主がいる場所へ向かう。
 もしその主がティナだったら、と思うと居ても立っても居られない。

 しかし、目的の場所まではずいぶん遠いらしく、一日や二日では辿り着けなさそうだ。