月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。








 次の日、トールは夜明けと同時に出発する。ティナに追いつくにはまだまだ時間がかかるだろうが、せめて彼女の痕跡だけでも早く見付けたかったのだ。

《あ〜〜……。元に戻っちゃったよ〜〜!》

 ルシオラと会話ができるようになったものの、精霊が人間の姿になれるのは満月の日の夜だけらしく、今のルシオラの姿は光の玉に戻っている。
 だから表情はわからないが、声からしてものすごく落ち込んでいることがわかる。

「不思議だね。どうして満月の夜だけなんだろう」

《ルーアシェイア様が月を司るからかもね。満月は力が一番強くなるし》

「月を司る、か。じゃあ月下草も精霊王と関係がありそうだね」

《そう思うんだけど……。その辺りは記憶が無いの……役に立てなくてごめんね……》

 ルシオラはティニアの記憶を完全に受け継いでいないため、ところどころ記憶が抜け落ちていると言う。
 きっと彼女は記憶があればティナを助けてあげられるのに……と思っているのだろう。