月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 それにそう簡単に受けられるものではないだろうから、途方もない時間がかかるだろう、とティナは思っていたのだが──。

「ん? 嬢ちゃんはもう祝福されとるでな」

「──はっ?!」

 ティナはめちゃくちゃ驚いた。驚きすぎて、言葉が出てこない。

「なんじゃ。知らんかったのか? 嬢ちゃんはこの森に入って何日じゃ?」

「──……え? 1日、ですけど……?」

「祝福されたいうても、普通の人間がここまで辿り着くには1年はかかるぞい。嬢ちゃんが聖獣の主で精霊から祝福されとったから、そんな短時間でここまで来られたんじゃよ」

「……!?」

 確かに、ノアが言う通りティナはアウルムに乗せてもらってここまで来れた。
 森の中は人の手が入っていないから、もちろん道などはなく美しい自然がそのまま残っている。
 草をかき分けながら進まなければならないから、歩く速度もかなり制限されるだろう。

「で、でも……っ! 私は精霊を見たことがなくて……」

「そうさな。見たところ、嬢ちゃんはまだ万全の状態じゃないからのう。魔力の流れが不自然に澱んどるでな。長い間魔力を封じられておったんかのう?」