「えっと、やっぱり私の両親も月下草を探しにここへ来たんですか?」
20年前なら両親はまだ新婚だったかもしれない。しかしティナは彼らから<迷いの森>の話を聞かされていない。
それに両親がノアと会ったことがあるのなら、必ずティナに冒険譚として話してくれたはずなのだが……。
きっと、すべての感覚を迷わせてしまう<迷いの森>で、両親も例に漏れず迷わされたのだろう。
「んん〜? どうだったかのう……。確かあの二人は月下草を見つけられんかったはずじゃ。おそらく別の素材を採取して帰ったんじゃないかのう?」
ノアが当時のことを思い出そうと、うんうんと唸っている。
彼も少しは森の影響を受けているようだが、さすがハーフエルフ。人間に比べてかなりマシなようだ。
「そうですか……。でもノアさんは20年も前のことをよく覚えていらっしゃるんですね」
「この森では滅多に人と会わんからのう。それに2人共珍しく精霊に好かれておったからな。印象深かった、というのもあるでな」
「え?! 両親は精霊に好かれていたんですか……?!」