月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 そう言ってノアが指を刺したのは、山が連なっている中でも一番標高が高い、雄大な山だった。

「精霊王?!」

 精霊が住むと伝えられていた湖に、精霊王まで住んでいると知ったティナは驚いた。
 ノアは湖に行ったことはないらしいが、どこにあるのか知っていて、しかもかなり重要なヒントをティナに教えてくれたようだ。

「そうじゃよ。確か精霊王の系譜に連なる精霊が、この国を興した人物と仲が良かったと聞いたことがあるぞい」

「あっ……!」

 ティナは街で買った本『エーレンフリートと精霊の旅』を思い出した。
 ついトールを思い出してしまうので、まだ読んでいなかったのだ。

「ワシじゃその湖まで辿り着けんからのう」

「そんなに遠いんですか?」

 フラウエンロープの森を地図で見ると、小国が丸ごと入りそうなほど広いとわかる。
 そんなに距離があるのなら、ノアが移動するのも一苦労だろう。

「それもあるが、ワシゃ精霊に嫌われておるでな。この森に住むのを許してもらえとるだけでも感謝せんとな」

「え、精霊に嫌われてるって……どうしてですか?!」