月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 どうやらノアは大魔導師と称えられるのが嫌らしい。

 本来なら、大魔導士は全ての魔法使いたちが目指す称号だ。しかしノアを見る限り、彼はそんな称号に興味がなく、研究しているうちにそう呼ばれるようになったように思われる。

「……ん? でも大魔導士デュノアイエ様がご存命だったのは500年ほど前ですけど……?」

 500年前に亡くなった、と教科書には記載されていたような気がする。それなのにノアは300歳だと言っていた。数が全く合っていない。

「ワシゃまだ生きとるわい! 勝手に殺すなんていい迷惑じゃ!」

 ノアがプリプリと怒っている。さすがに超高齢とはいえ、その様子はまだまだ元気そうだ。

「でも、世間ではそう思われてますよ? どなたかに隠居するって言わなかったんですか?」

「……あっ」

 どうやら思い当たる節があるらしい。ノアが手をもじもじとさせている。
 そんな様子に、きっとノアは誰にも言わず突然姿を晦ませたのだろうな、とわかる。

「まあそれはさておき、先ほど伺ったノアさんの年齢の計算が合わないんですけど……どういうことですか?」