月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 確かに、ノアほどの魔法の使い手なら、その名は世界中に轟いていたかもしれない。しかし、神殿で過ごしていたティナは世間に疎いところがあった。

「へぇ……! ノアさんは有名人なのですね! 私、魔法使いは大魔導士のデュノアイエ様ぐらいしか存じ上げなくて」

 大魔導士デュノアイエは、学院の教科書に載るほどの偉人だ。
 彼が活躍したのは500年ほど前で、初めて魔法属性を体系化したことから世の魔法使いたちに「魔法学の父」と呼ばれていた……とティナは記憶している。

「ふぉっふぉっふぉ。嬢ちゃんがワシを知ってるとはこりゃまた恥ずかしいのう」

「え? ……っ?! あ、あれ……? この展開、ま、まさか……?」

「デュノアイエはワシの本名じゃよ。言いにくいから親しい人間にはノアと呼ばせておるでな」

「えぇ〜〜〜〜っ?! 本当に?! 大魔導士様なんですかっ?!」

 ティナはノアが大魔導士だと知って驚愕する。
 一体今日は何回驚いたのか……。きっと数えきれないほど驚いているのだろう。

「周りの人間からはそう呼ばれておるな。面倒くさいことじゃわい」