月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「あれ? あれ? 何かおかしくないですか……? って、あ! もしかして空間拡張?!」

 人が四人も入ればいっぱいになりそうな小さな小屋の中は、その見た目以上の広さがあった。

「ふぉっふぉっふぉ。魔法でちょちょいとな」

「いやいや、これはそんな簡単な魔法じゃ……」

 まるで他愛もないことのように言うノアだが、空間拡張の魔法は難易度が高く、使える人間はごく少数しかいない。
 魔法鞄が貴重で手に入らないのも、制作できる人間がなかなかいないからだ。

 ティナはティナで空間魔法系統の結界を張ることができるが、空間拡張の魔法までは使えない。トールならもしかすると使えるのかもしれないが。

 戸惑うティナを置いて、ノアはごく自然にお湯を沸かし、お茶の準備をしている。
 水が出る蛇口とお湯を沸かすコンロも魔道具のようだ。

「ほら、疲れが取れるお茶じゃよ。茶菓子でもあればいいんじゃが……。あいにく切らしてしもうてのう」

 ノアが淹れてくれたお茶は、爽やかな香りの薄黄緑色のお茶だった。綺麗な水色で珍しいお茶のように見える。

「わぁ……! 綺麗なお茶! この辺りで採れた薬草か何かですか?」