月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 ルリが去って行く気配を感じながら、ティナは自分が寝ぼけていたことに気づく。

(あー、びっくりした。神殿から追っ手が来たのかと思ったよ……)

 思わず出た鋭い声でルリを驚かせてしまい、申し訳なく思う。

 アレクシスとトールと決闘した日から考えると、とっくに彼から自分の話が神殿に伝わっているはずだ。
 大神官オスカリウスはティナの意を汲んでくれるだろうが、聖国の他の神官たちはティナを逃すまいと、追ってくる可能性が高い。
 クロンクヴィストにいる間は彼らも手を出してこないだろうが、それもいつまで持つかわからない。

 ティナは固まった身体をほぐすように、大きく伸びをするとアウルムに言った。

「アウルム、起こしてくれて有難うね。ご飯を食べに行こうか?」

『わーい! ごはんー! ぼくおなかすいてたのー!』

 ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶアウルムにほっこりしながら、ティナは何かを忘れているような違和感を覚える。

「うーん、何だろ? 何か不思議な夢を見たような……」

 夢の内容は忘れてしまったみたいだったが、気分が良いのできっと、楽しい夢だったのだろう、とティナは思うことにした。