月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 ティナは入国審査場の審査官から言われた言葉を思い出した。彼も注意するように言っていたし、この機会に買っておこうと思ったのだ。

「そうだねぇ。首輪というのも無粋だから……ああ、これが良い」

 首輪を探していた店主が見付けたのは、綺麗な魔石が付いた銀のブレスレットだ。

「これは装着者のサイズに合わせて大きさが変化するからね。獣魔が成長しても問題ないよ。首輪よりは見た目も良いだろう?」

「わぁ! 本当だ! これすごく可愛いですね! これにします!」

「おやおや、わたしゃまだ値段を言っていないよ? そんな簡単に決めて大丈夫なのかい?」

「え? そんなに高いんですか? 金貨十枚とかは流石に無理なんですけど……」

 魔道具の相場を知らないティナは、このブレスレット兼首輪の値段が全くわからない。でも店主のお婆さんなら、暴利を貪らないだろうと思ったのだ。

「あんたねぇ……流石にそこまでしやしないよ。全く、どこのご令嬢か知らないけど、金銭感覚が普通じゃないね」

「いや、私は平民なんですけど……。金銭感覚は……自覚ありますね」