月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 自分がヴァルナルやリナを巻き込んだから、二人は命を落とし、ティナに深い心の傷を負わせてしまった──その事実が、トールを苛むのだ。

 ティナを想えば想うほど、罪悪感に襲われる──そんな無限ループを繰り返していたある日、トールは例の大事件に遭遇する。

 学院の教授に卒業後の進路で呼び出された後、教室に戻ろうと渡り廊下を歩いていたトールは、ふと誰かに呼ばれたような気がして足を止めた。

 周りを見渡しても、自分に声を掛けたらしい生徒は見当たらない。
 だけどトールは何故かその声が、とても大切なもののように感じられたのだ。

 一瞬、精霊たちが自分を呼んだのかと思ったトールだったが、セーデルルンド王国の王都では精霊たちの動きが何故か鈍ってしまう。
 だからトールは精霊たちのことを考え、学院に連れて来ていなかったのだが──。

 結局、自分を呼んだ声の正体はわからないまま、歩いていたトールは学院中の雰囲気がおかしいことに気がついた。

 誰かが喧嘩でもしたのだろうか、と思ったトールは生徒たちが話している内容を聞いて驚愕する。