月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 ラーシャルード教とアコンニエミ聖国に対抗する手段を手に入れたのだ。きっと自分のこの力は、ティナを助ける力になるだろう。

 トールは精霊と邂逅した日から、彼らと交流し時々手伝って貰いながら、着実に力を付けていった。

 それから一年後──ティナと別れてから五年がたった頃。
 セーデルルンド王国から<聖女>の出現が公表された。トールが一番恐れていたことが、ついに起こってしまったのだ。

 やはりティナの稀有な神聖力は隠しきれず、神殿に気付かれてしまったらしい。

『──<聖女>は神聖力を供給するための装置みたいなもんだ。神殿に良いように扱われ、自由がない生活を強いられながら一生過ごさなければならない……。そんな人生を可愛い娘に──ティナに送らせたくないんだ』

 トールの頭の中で、ヴァルナルの言葉が蘇る。
 ヴァルナルの願いを叶え、約束を守るために、自分に出来ることは何か──。しばらく考えたトールは、あることを思いつく。

(今はセーデルルンド王国の聖女でも、結局はアコンニエミ聖国の出方によって、ティナの処遇が決まってしまう。それなら、いっそ──!)