月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「すみません、先生。僕はティナを置いていけません。ティナを守ると約束したんです。行くならティナも一緒に連れて行ってはいけませんか?」

 トールが拒絶した理由を察したフェダールは、しばらくティナをじっと見ると、困ったような表情を浮かべた。

「しかし、この少女は随分生命力が低下しています。今連れていけば、命の危険が……」

「生命力が低下?! どうして……」

 フェダールの言葉に、トールは心臓が掴まれたかのような衝撃を受ける。どこにも怪我は負っていないのに、ティナが何故命の危険にさらされているのか、わからないのだ。

「魔力を極端に消耗しているのに加え、彼女には生きる気力がありません。きっと心にかなり深い傷を負ったのでしょう」

「あ……」

 ティナの状態に、嫌というほど思い当たってしまったトールは言葉を失ってしまう。

 そんなトールを見たフェダールはしばらく考えると、ある方法をトールに提示した。
 それは──。

「──トール様、この少女の記憶を一部、消去すれば生きる気力が戻るやもしれません」

「記憶を……?」