月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 だけど無理に起こしたとしても、更にティナの心を傷つけそうで、トールは起こすタイミングを失っていた。

 眠りながら涙を流すティナに、トールはこのまま自分は何も出来ないのか、ヴァルナルたちと交わした”ティナを守る”という約束を守ることすら出来ないのか、と不甲斐ない自分を悔しく思う。

 トールは未だうなされているティナの手を握り、早く悪夢から覚めますように、と祈る。

 そうしてトールがティナの様子を見ていると、部屋の中に何かの気配を感じた。

「誰だ?!」

 警戒したトールが気配がする方へと向くと、影がゆらめいて人の形を作る。

「あ、貴方は……フェダール先生?!」

 部屋の中に現れたのは、少しの間だけであったが、トールに魔法を教えてくれた宮廷魔法師のフェダールだった。
 彼は名のある魔法使いで、国王の側近の一人でもある。そして優秀なトールを認め、可愛がってくれたのだ。

「トール様、よくぞご無事で……! 陛下もトール様を心配しておりました」

「父上が? でも……」