月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 次の攻撃魔法を繰り出すにも詠唱時間が必要だ。きっとその間に残りの魔物達が襲ってくるのは間違いない。

 魔物達は散らばっている肉片の匂いを嗅いだ後、生きているトール達に標的を絞る。逃がさないように、先に襲おうと考えたようだ。

「ガルルルルゥ……っ!!」

 魔物達の殺気が爆発的に膨れ上がり、周りの空気がピリピリと震える。
 殺気を受けたトールがティナを守るように抱え込み、魔法を発動しようとすると、今まで微動だにしなかったティナの口から、突然叫び声が発せられた。

「ああぁっ!! ああああああああああああっ!!!!」

 ティナの悲痛な絶叫が森に響く。それと同時にティナの身体から膨大な魔力が放出される。

「ティナ……っ?!」

 トールがティナの豹変に驚いていると、今まさに二人を襲おうとしていた魔物達から「ギャン!!」「ギャウッ!!」と鳴き声が聞こえてきた。

「な、なんだっ!?」

 何事かと思ったトールは魔物を見て驚いた。魔物達の身体に線のようなものが走ったと思うと、ずるりと魔物の身体が横にズレたのだ。

「な……っ?!!」