月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。


 崩れ落ちるトールを見て、ティナは声にならない悲鳴を上げる。

 自分を守ってくれたトールの身体がどんどん冷たくなっていくのを感じ、ティナはトールを傷つけた者たちへの怒りで、目の前が真っ赤に染まる。

「……え?」

「あ、れ……?」

 トールを殺そうと、ナイフを持っていた盗賊たちが不思議そうな声をあげる。身体に違和感を感じ手元を見てみると、ナイフの刃が半分に切れていた。

「どうし……」

 盗賊たちの様子に異変を感じた貴族の男が、声を掛けようとして途中で止める。何故なら、男たちの身体がズルっ、とズレたからだ。

「ぎゃぁあああああああっ!!」

 貴族の男が悲鳴をあげる。凄惨な光景を見て恐慌状態に陥ったのだろう。

 男たちの身体がボトボトと細切れとなって土の上に落ちる。
 それは一瞬の出来事で、盗賊たちは何が起こったかもわからないまま、肉片と化したのだ。

「ひ、ひぃいいいいっ!!」

 貴族の男はあまりの恐怖に腰を抜かしてしまう。目の前で起こった現象が理解できなかったからだ。