月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 それなのに不快に思うどころか、ヴァルナルのそんな行為をとても嬉しく思う自分を、トールは不思議に思う。

 それから、ヴァルナルは「俺の家族だ」と言って、少し離れた場所で待っていた妻と娘をトールに紹介してくれた。

 ヴァルナルの妻のリナは儚げな雰囲気の綺麗な女性で、娘のティナはリナによく似たとても可愛らしい少女だった。

 ティナはトールの前までトコトコとやってくると、花が咲くような満面の笑顔になった。

「わたしティナ! よろしくね!」

 キラキラとした大きな瞳でトールに挨拶するティナは、ヴァルナルが世界一と自慢するだけあり、とても可愛い顔をしていた。

「う、うん……! 僕はトールヴァルド・ビョルク・クロンクヴィストだよ」

「え? トールバ、ビョ……?」

「ふふ、トールでいいよ」

 トールの名前はティナにとって長すぎたようで、首を傾げながら名前を復唱しようとする姿はとても愛らしく、トールは思わず笑みを漏らしてしまう。

「うん! トール! トールのお目目、とても綺麗ね! お月様みたい!」

「えっ……そ、そうかな……」