月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 王室派貴族たちの協力のもと、無事に王宮から脱出したトールたち一行であったが、セーデルルンド王国までの道中で魔物に襲われてしまう。

 護衛も少なく、一行が魔物に苦戦していた時、運良く偶然通りかかった冒険者ヴァルナルに救われたトールたちは、そのままヴァルナル一家と行動を共にすることになる。

「困った時はお互い様だ! それにあんたら訳ありだろ? 見たところ何かから逃げてるんじゃないか?」

 経験豊富で優秀な者しかなれないA級冒険者であるヴァルナルは、トールたち一行の事情を一目で見抜いたらしい。

 おそらくトールの瞳の色を見て、彼の正体を察したのだろう。

「こんな小さい坊主の命が狙われているのを、見て見ぬふりなんかしたら寝覚めが悪いし、何よりリナに怒られちまう。それに俺には坊主と同じ年頃の、可愛い可愛い世界一可愛い大事な娘がいるからな、人ごとじゃないんだよ」

 ヴァルナルはそう言うとにかっと笑い、トールの頭をガシガシと撫でた。

 トールをそんなふうに扱う人間は初めてだったし、何より頭に触れるのは王族に対して不敬極まりない行為だ。