月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

(いや、でもトールだしなぁ……。小さい頃から優秀そうだし……)

 専門の知識が必要な従魔契約の魔法すら、魔法陣なしで行使できるトールなのだ。小さい頃に忘却の魔法が使えたとしても、すんなり納得してしまうだろう。

「ティナの予想通りだよ。俺が君の記憶を魔法で奪ったんだ」

「──っ?!」

 トールの告白にティナは絶句する。

 トールが当時から魔法に長けていたのは納得したが、ティナは彼がわざと「奪う」という悪印象な言葉を使ったことが気になった。
 それはまるで、自分を嫌って欲しいかのようではないか、と思ったのだ。

「奪ったって、そんな……! でもどうして……っ?」

「……それは……俺が、君の両親が亡くなった原因だから、だよ」

「──な……っ?!」

 ティナはベルトルドから両親が亡くなった理由は、盗賊団に襲われている商団を助けようとして巻き込まれたからだ、と聞かされていた。
 しかし、トールの話が本当なら辻褄が合わなくなってしまう。