月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 顔は見えないが、トールはきっと優しい顔をしているのだろう、と二人を微笑ましく眺めながらも、ティナは少し羨ましいな、と思う。

「そう言えばこのヘールスって街、すごく活気があるけど、クロンクヴィストって他の都市もこんな感じなの?」

「そうだなぁ。特にこの街は賑やかだと思うけど……何か気になることでもあった?」

「えっと、御者台にいたトールは聞こえなかったと思うけど……」

 ティナは商人たちが噂していた内容を説明した。ティナ自身、セーデルルンド王国の雰囲気が暗いと聞いて気になっているようだ。

「……もう影響が出始めているのね。やっぱり急いで正解だったわ」

「え? それはどういう……」

 ティナたちの話を聞いていたイロナが呟いた。その呟きを聞いたティナは不思議に思う。

「まだティナちゃんたちには教えていなかったわね。私達がクロンクヴィストへ移住しようと思ったのは、セーデルルンドが衰退すると知ったからよ」

「なっ……?!」

「え……知ったというのは、もしかして占いでですか?」