すうっと眠りについたティナを少し残念に思いながら、トールはその寝顔を微笑ましく見つめている。
ティナと気兼ねなく話がしたくて、一緒のテントで寝ようと誘ってみたが、無防備であどけない寝顔を見れたのなら、それはそれで役得だ。
正直、ティナが一緒に寝ることを了承してくれるとは思わなかった。
それだけ自分を信用してくれていることなのだろう、と思うものの、男として意識されていないのではないか、と心配になる。
ティナには級友か冒険者仲間以上に慕われているはずだと思うものの、恋愛感情を持たれているかどうかは、恋愛経験が乏しいトールにはわからない。
そもそもアレクシスの言う通り、素顔も正体も明かさない怪しい自分を、ティナが好きになってくれるとは思えなかった。
──もう間もなく、一行はクロンクヴィストに到着する。
これから先も、ティナと一緒にまだ見ぬ世界を冒険したい、彼女と驚きや感動を共有したい、とトールは心から願う。
しかし、ティナが自分の正体を知れば、その願いは叶わないのだと、トールは嫌でも理解している。
だから彼女が自分から離れていくその瞬間を迎えることが、トールは何よりも怖かった。
でも、それでも今だけは──。
この愛おしい存在と共にいられる幸せに浸らせて欲しい、と神に祈ることしか、今のトールには出来なかった。



