静かだ。
どれくらいの時間が経ったのかも分からない。

うなだれて椅子に座っていた瞬は、やがてゆっくりと鞄の中から台本を取り出した。

机に置き、ページをめくってみる。
最初のページに《登場人物》と書かれていた。
そしてその横には、

小石川(こいしかわ)(しゅう)(23才) ………… 柏木(かしわぎ)(しゅん)

それを見ながら、先程の富田の言葉を思い出して考える。

(直哉だったら…自分の名前がここに書かれていたら、感激するのだろうな)

知らなかった。
直哉のことも、充希のことも、そして優斗の気持ちも。

ほぼ毎日一緒にいたのに…

自分の不甲斐なさにため息をつきながら、瞬は台本を手に読み始めた。