バン!と机を叩き、いつもの富田からは想像がつかないほど怒りに満ちた目で、瞬を捉える。

「月9ドラマだぞ?そのW主演に抜擢されたんだぞ?しかも監督は、あの有名な藤堂さんだ。俳優が皆、喉から手が出るほど欲しがる役に、監督はお前を選んで下さったんだぞ?何をとぼけた事言ってんだ!」

そうまくし立てて、小さく息を吐き出すと、今度は諭すようにゆっくり口を開いた。

「いいか、瞬。よく聞け。お前のこのドラマにサザンクロスの将来がかかってる」
「まさか、そんな、大げさな…」
「大げさなんかじゃない。お前、知ってるか?直哉がどれだけドラマに出たいと思っているか。お前が月9に選ばれた時、あいつがどれだけ悔し涙を流したか」

えっ…と瞬は言葉を失う。
そんな事は全く知らなかった。

「充希だって、いずれはコメンテーターやMCも出来るマルチな存在になりたくて、今は必死に目の前の仕事を頑張ってる。優斗は…あいつはそんな2人の気持ちを知っていて、アイドルらしい役割を自分が担おうと、ひときわ笑顔で愛想良くしてる。サザンクロスの人気がもっと出るようにってな」

もはや打ちのめされたように言葉もなく下を向いている瞬に、富田は最後に力を込めて言う。

「瞬、よく考えろ。自分の立場、みんなの気持ちをな」

そう言って瞬の肩を叩くと、富田は部屋をあとにした。