(今日は詳しく話をしなければならない)

そう思うと明日香は少し気が重かった。
(紗季さんを失望させてしまうかな…)

恐る恐る、あの日の出来事を詳しく話す。
優子に話した時のように、紗季も真剣な表情のまま明日香の話を聞いている。

「すみませんでした。りなちゃんのリボンが直前で裂けるようなことになってしまって」

最後に謝ると、紗季はすぐさま、ううんと首を振った。

「何があったのか、よく分かったわ。まず初めに、私が大事な現場に経験の浅い明日香を1人残したこと、本当に申し訳なかったです。ごめんなさい。とても焦ったし、不安な思いもしたでしょう。そんな状況にさせてしまったのは私の責任です」

そう言うと、ごめんなさいと明日香に頭を下げる。

「いえ、そんな!謝らないで下さい」
「ううん、優子さんからも電話をもらったの。彼女もその時、3人のそばを離れていたんですってね。私達、いい大人なのに、まだ若いあなた達にそんな大変な思いをさせてしまって…お互い反省しなきゃねって」

そうしてようやく笑顔を見せた。

「それにしても、すごいわね!明日香。控え室に着替えに行くのが間に合わないって判断して、その場でリボンを縫ったんでしょう?それも本番3分前だったって?」