その日の放課後、明日香は制服のままオフィスに向かった。

今日は外に出る仕事ではないので、私服に着替える必要はなかったが、やはりどこの学校の生徒か分かる状態は良くないと思い、ジャケットとリボンは外していた。

「おはようございます。お疲れ様です」
そう声をかけながらオフィスのドアを開ける。

「明日香、おはよう!紗季さんは奥にいるわよ」
顔を覗かせた葵が教えてくれる。
お礼を言って、明日香は奥の作業室に向かった。

「あ、明日香!おはよう」
失礼しますと入っていくと、紗季はいつもの笑顔を向けてくれる。

だが、明日香はやや緊張していた。
今日はあの生放送の日のあと、初めての出勤だったからだ。

あの日、衣装を持ってタクシーでオフィスに戻ったのが夜の9時前だったこともあり、紗季は簡単に話を聞くと、
「大体のことは分かったわ。今日はもう帰りなさい。詳しくはまた今度ね」
そう言って、すぐに明日香を帰らせたのだった。