「そうそう。お前が外に出る間、ずっとつけてほしいもんがあるんだよ」

「なに?」

「これ」


 そう言って渡されたのは小さいストーンのみのピアス。


 色は……真みどり。夏の“青葉”を思い起こさせるような、そういう色。


「穴、開いてるよな?」

「開いてる、けど……なんでこの色?」

「うーん……」


 わざわざもったいぶって間をあけるこの男はいったいなにを考えているのか。


 袋をよく見ると開封済みで、片耳分がない。


 ()いでやつの耳を見れば、そこには季節に合わない新緑の色が輝いていて。


 しれっと私の手から残りのピアスを奪ったかと思えば、たまたまガラ空きの私の耳へと青葉を飾った。



「俺のって印」



 私の耳をひと撫でし、名残惜しそうに離れていく手。


 満面の笑みはまっすぐに私へと向けられていて……真っ赤な夕日に照らされたそれは心が震えるほどに美しかった。