その1
夏美



その日のブロック会が始まる前、2年の先輩から言付けをもらったんだけど…

「ここの会合が終わったら、U市の喫茶店○○に行ける?」

「はい。時間は大丈夫ですけど…」

「甲斐先輩と野上先輩から話があるそうよ。夏美だけに…」

先輩は事務的にそう小声で告げてくれたわ

大御所のOG二人が私だけにって…

何だろうか…


...


指定の喫茶店に着いたのは時間を少し過ぎていた

先輩お二人はすでに到着していたわ

「先輩、遅くなってすいません…」

「ああ、ブロック会ご苦労さま。今日の伝達事案じゃあ、時間はかかるでしょ」

そう言って、甲斐由美子先輩は隣の野上玲子先輩に顔を向けると、二人はちょっと笑みをこぼしていた

確かに先程のブロック会での伝達内容の一部には、ちょっとショックを受けたかな…

...


「…とにかく、先日の幹部会は荒れたわ。はっきり言って、”例の事案”については幹部会も真っ二つに割れたのよ」

甲斐先輩はそう言って、大きくため息をついたわ

「まあ、最後は土佐原先輩がうまく収めてくれたけど、これは尾を引きますよ、先輩…」

「ええ、そうね」

ドライな性格の野上先輩も、今日はどこか思いつめたような口ぶりだったのが、事態の深刻さを物語っているようだったわ

”その事案”とは他でもなかった

昨年秋に紅組×墨東会の決着を受け、南玉連合も加えた3者間での協定合意…

この中に、南玉への公認チーム結成に縛りをつける条項が盛り込まれていた訳なんだけど…

当然、その時点では南玉連合の幹部会で諮られて、結果、全会一致賛成となり、その条項を承諾したのよね

確かに…

...


ところが時間の経過とともに、当該条項への不満が募ってきたってことなのよ

それはじわじわと…

そして、ついにこの春に至って、臨界点を超えたと…

今回参集された幹部会では、2年の北見先輩が当該条項の承諾撤回審議を発議したそうなのよ

その先輩のシンパが木戸真澄で…

まあ、初対面の時、いみじくも志を共にとかってのを賜っていた”その先輩”ということよ、今回の爆弾を投じた北見先輩は…

ふう…、まさに爆弾だって

これ…