その10
夏美



「はは…、来たぞ」

「知ってる人?」

「ああ、今こっち呼んで紹介するよ。…おーい、亜咲ー!」

はは…、デカイ声ね(苦笑)


...


亜咲と呼ばれた長身の彼女は左手を上げて達美に会釈した後、こっちに向かって歩いてきた

「亜咲ー、高校入学できたからよう、南玉で一緒にやれるよ。よろしく…」

「達美…、私こそよろしくね。はは、でもよかったね、希望校入れて」

「おお、県立滑ったら、ウチじゃあ私立行けないんで、柄にもなくガリ勉しちゃったよ。はは…、でも、どうやらビリッケツすれすれだったみたいだし、留年しないように頑張らなくちゃ。…ああ、いけね…、紹介しなきゃ。この人、滝が丘入った相川夏美さん。そんで、この人は高原亜咲さんね」

「初めまして、高原です…」

「相川です」

初対面の私たち二人はサッパリとしたあいさつで、互いにニコニコしながら顔を見つめ合っていたわ

何と言っても好印象だったのよ

彼女とは相性も合うって…

一目、アイコンタクト交わしてそう確信できたし

かくして…、私たちトリオはこの日、初の揃い踏みを済ませた訳よ


...


その後、現総長の水田美由紀先輩をはじめ、執行部3人が見え、聞いていた通り、その日は私たち新入メンバー合計21人が自己紹介し、通り一遍の顔見せに終わったわ

総長からもあまり細かい話はなく、組織運営の主だった決まりを説明された程度でね

南玉連合は幹部会等で審議された事項を、各ブロックに分けての会合において、新入メンバーへその伝達が成されるらしい

その他、下からの相談ごとやトラブル事案などを上げる際のルールや流れもね

うーん…、さすが大人数の組織だけに、コンセンサスはしっかりしてるなあ…

やはり原則、女子だけの現役高校生でこれだけの大きい組織を運営していってるだけあるわよ…

これが私の偽らざる実感だったわ


...


何はともあれ、ここから始まったのよ

今日集まった私を含めた21人の新入メンバーは、みな目を輝かせ、胸を高鳴らせていたはずだよ

木戸真澄も各先輩からの話を真剣にメモしていたし(苦笑)…

ここに集ったメンバーは、全員が発熱した果実

みんな、紅丸さんなり南玉連合なりに、憧れ覚醒させられた猛る女たちだもの

これから起こる物語は、そりゃあ激しいものになるわよね

そして‥、そのプロローグの幕は、既に上がっていたのよ…