最強王子とフェンス越しの溺愛キス



ピタッ


その名前を耳にした瞬間、新島は動きを止めた。



「生吹って、春風生吹だろぉ?」



ニタァと笑う顔に、思わず「ヒッ」と短い悲鳴が出る。

だけど、新島は私に近づいたまま、また、その名前を口にした。



「生吹はなぁ~惜しい奴だよ。族に入らねぇかって、あれほど言ってんのによぉ。涼しい顔で拒否しやがるんだぜぇ?」

「ぞ、く……?」

「俺らのLunaに生吹が入りゃ、百人力なんだけどなぁ」



「あー惜しい惜しい」と首を左右に倒してポキポキ鳴らした後。

新島は、また私に目を向ける。瞳孔が開いたその目は、恐ろしく光り続けた。



「生吹が強いってのは知ってっかぁ?」

「つ、強い……?」

「ケンカだっての。アイツ一人で何人分の戦闘力かってくらい、アイツの強さは異次元なんだ。

でさ、総長の噂って、魔女の耳にも届いてるかぁ?」

「総長の、噂……?」



真白ちゃんの言葉が、ふと頭に浮かんだ。



『本当の総長はメチャクチャ強いんだって。

それにメチャクチャ、カッコイイらしいよ』