「美月の高校の人たちに“ 王子”って呼ばれてる。けど、俺には似合わない。
俺を知ってるこっちの高校じゃ、いじられてるよ。よ、王子様って」
生吹くんは「ふー」と息を吐く。そして「はい」と、笑顔で私にスマホを渡した。
「本当、噂なんて散々だよ。いつも本人にとっていい事はない」
スマホを渡しながら、不愉快そうに呟いた生吹くん。
すごく共感した私は、つい「分かるよ」と返事をした。
「私も、そう……。噂は、キライ」
「うん。美月も、そんなに綺麗だと大変だ。あらぬ噂をかけられそう」
「そ、そんな事は無い、けど……」
それきり言葉が続かなくて、ブランケットをギュッと握り締める。
だけど生吹くんは「大丈夫」と言った後――フェンスから手を伸ばして、私の頭を撫でた。



