「ロックかけていい?スマホの」
「ロック?」
「もしもスマホを落とした時に、誰かに悪用されないために」
「うん。じゃあ、お願い」
「美月の好きな数字を六個言って」
「え~っと……」
その時に、すぐ頭に浮かぶ六桁の数字。
記憶から蘇る、紙切れと数字。
「(私、まだハッキリ覚えてるんだな……)」
苦い映像を思い出した後、自嘲気味に笑みが漏れた。だけど間の悪いことに、その顔を生吹くんに見られてしまう。
「美月……どうしたの?
なんか辛そうな顔してる」
「え、ううん……何でもない。
あ、決まったよ?数字」
「ん、分かった」
ふぅと、深呼吸をする。
そして自分を落ち着かせている間、生吹くんを見た。その手には、まだ操作中のスマホが二台。
「(器用だなぁ……)」
滑らかに手が動いてる。しかも両手。
スマホをサクサク操作する生吹くんがかっこよくて、その横顔に釘付けになる。
「(綺麗な顔。無駄な物が一切ないような。まるでおとぎ話の王子様のような、そんな完璧な顔)」
そんな事を、思っていた時だった。
「俺さ、王子様なんて呼ばれてるんだよね」
と、いきなり生吹くんが口にした。
「えっ」
ちょうど私も「王子様」と思った所だったから、ビックリした。生吹くんに、私の心を見透かされたのかと思ったから。
ドキドキしながら生吹くんを見ると、顔を歪めて不満そうな表情をしている。



