「ねぇ美月。連絡先を教えて欲しい。
交換しよ?」
「え?」
「いつでも連絡取れるように。お願い」
「(お願いって……)」
ただ連絡先を交換するだけなのに、生吹くんがすごく真剣なのが分かる。
あ、そっか。
用事とかで昼休みに会えないこともあるから、そういう時に必要って事なのかな。
「もちろんだよ。私も……生吹くんの連絡先を知りたい」
そう返事すると、生吹くんが安心したようにホッと息をつく。
「ありがとう。じゃあ、スマホ出してもらってもいい?」
「うん。あ……私、スマホの使い方が分からなくて」
今まで誰とも連絡をとってないスマホ。
念のためにあるだけのスマホ。
私には用がないと思っていたから、操作なんて全然知らなかった。
「(世間知らずって、笑われるかな……?)」
だけど生吹くんは「俺に任せて」と言ったきり、ササと二台のスマホを、両手で操作した。
「(笑われなかった、良かった……)」
生吹くんの早業に目を奪われながら、そんな事を思った。安堵から、肩の力が抜ける。



