『あ、たしも……』
『え?』

『あかめくんのこと、すき!』
『っ!』



その時の幸せな感情は、今もずっと覚えている。忘れるわけがない。忘れられない。


美月から貰った真っすぐな思いが、俺を一瞬で満たしてしまったのだから。




だけど、時は一変する。




同じ組の女の子に、いつか聞かれた時だ。



『みつきちゃんのこと、すきなのー?』
『じゅんやくーん』



好きだって言えばよかったんだ。だけど正直に言うと、顔が赤くなってしまう。そうしたら皆にからかわれてしまう――


それだけの事だった。俺のプライドが邪魔をして、俺は思ってもない事を口走った。




『すきじゃない。みつきがひとりで、もりあがってるだけ』




その時に、ザッと足音が聞こえた。僅かに顔を向けると、そこには美月の後ろ姿があった。