*純也*




俺は幼稚園児の頃から、わりと容姿が目立つ方だった。もちろん、春風生吹には到底及ばないが。


それでも周りから、綺麗な顔だと言われた。自分に言い寄ってくる女子がいたし、男子からは尊敬の眼差しで見られた。皆が俺の事を、チヤホヤもてはやした。



ただ一人。ある女の子を除いては――




『あなた、だぁれ?』
『あかめ じゅんや……だけど』




その子は突如として現れた。というよりも、俺より二個遅れて入園してきた「年下の女の子」というだけだ。


偶然にも園庭で会い、そしてお互いの目が合った。今まで綺麗だなんだと、もてはやされていた俺。だけど、その女の子を見た瞬間、世界がひっくり返った。




『きみ、かわいい!』
『え?そ、そんなことないよ…!』




照れ臭そうに、だけど嬉しさが隠し切れない顔で、困ったように笑った女の子。




『なまえ、おしえて』
『あたし…たちばな みつき』




立花美月――そう、これが俺と美月の出会いだったんだ。