――――私はこの学校で「魔女」と呼ばれている。
理由は簡単。
人の顔を見ただけで、何をしたいのか、だいたい分かってしまうから。
『ねえ、お手洗い、あっちだよ?』
入学式の日に、クラスの子に何気なしに声を掛けた。もちろん、小さな声で。
だけど、それがいけなかったみたいで。
その子はトイレに行きたいのを知られたくなくて我慢していたのに、すれ違っただけの私にそう指摘されてしまって。
クラスの皆に赤っ恥をかかされて、怒ったその子は――
翌日から、
私を「魔女」だと言いふらした。
『また、かぁ……』
小学校の時に、少し嫌な事があって。
それ以来、私は過度に人の顔色を見るようになった。
そうしたら、その人が何をしたいのか大体分かるようになってしまった。
その特技?を隠そうともしなかった私は、中学の時に「不気味だ」と忌み嫌われた。
『魔女でもなんでもない、普通の女の子なのになぁ』
私の声は、誰にも聞こえない。
ただ旧ゴミ捨て場に、いつも虚しく響くだけ。
魔女に尾びれ背びれの噂がついて、今では誰も目を合わせてくれない。
心臓をもっていかれてしまうからって……そんなわけないのに。
だけど――
「僕ね、美月ちゃんの事が好きなんだ」
これは一体、どういうこと……?



