またね――と手を振りあって、私のアパートの前で真白ちゃんとお別れをした。


だけど……


一向に帰路に着かない彼女。ずっと、立ちすくんでいる。



「真白ちゃん、帰らないの?」

「美月が家の中に入るまで、見届けさせて」

「え、うん。それは別にいいけど……」



ふふ、と笑みが零れた私を見て、真白ちゃんは首を傾げる。何がおかしいの?と言わんばかりの顔。



「笑ってごめんッ。あのね……変な事を言っちゃうんだけど。さっきのセリフ、真白ちゃんが彼氏みたいで、すっごくカッコよかった!」

「!」


「じゃあね、真白ちゃん。送ってくれてありがとう。気を付けて帰ってね!それじゃあ」



そしてドアが閉まりかけた、その時。




「――」




「ん?いま、」



何か声が聞こえたと思って、もう一度扉を開く。

だけど……



「あ、行っちゃった」



真白ちゃんはもう、元来た道を戻っていて。

私からだと、後ろ姿しか見えなかった。



「ばいばい、真白ちゃん」



彼女の背中にそう呟いて、私は今度こそドアを閉めるのだった。