「ケンカか?ほどほどにしとけよ」

「ん、分かってる」



二人順番に教室に入ろうとした、その時。

肩に重みがかかると同時に「春風~」と名前を呼ばれる。



「(また来たのか……)」



俺の顔に影が落ちる。

なぜなら、それは俺の嫌いな人物。

声だけで、誰だか分かる。
振り向かなくても分かる。


それくらい、嫌いなヤツ。



「なんですか、タク先輩」



振り向くと同時に目にしたのは、ニヤニヤした顔のタク先輩。

新島 拓(にいじま たく)。

暴走族『Luna』の総長代理として、ここらで幅を利かせてるらしい。



「(悪い噂の絶えない男……だな。俺よりも)」



そんなタク先輩から、俺はいつも同じ事を言われる。

そして、今日も――