「(話してしまえば、トラウマは消えるかもしれない。頑張ってみよう)」
一筋の望みを持って、口を開く。
「幼い頃――」とポツポツ喋る私の話を、二人は黙って聞いてくれた。
「幼稚園の頃、両想いだった子がいたんです。お互い”好き”って言い合って。
だけどその子が、他の子から”本当に美月ちゃんの事が好きなの?”と聞かれているのを、私が偶然にも聞いてしまったんです」
その子の後ろ姿しか見えなかったけど。
声だけは、はっきりと聞こえた。
『すきじゃない。みつきがひとりで、もりあがってるだけ』
『!!』
「ショックでした。ずっと両想いだと思っていたので。
でも違うんだって思ったら、両思いだと舞い上がってた自分が恥ずかしくなっちゃって」
自分が勘違いをしていたせいで、相手の人に迷惑をかけていたなんて……嫌だった。
それに――
これからも、そういう勘違いで自分が傷つくのが嫌だった。



