ガシャン



「う、が……ぁ……っ!」



フェンスの大きな音が鳴ると同時に、二人組の内の一人が、首を前から鷲掴みにされ宙づりになっていた。

生吹くんが、片手一つで男の人を持ち上げている。それは、あまりにも異様な光景だった。



その光景を見て、慄いたもう一人。

「ひぃ!」と叫んで逃げようとしたけど、生吹くんが素早く首根っこを掴まえて、フェンスに引き寄せる。


ガシンと大きな音をさせてぶつかった男の人の体を、生吹くんは逃さなかった。

フェンスの穴から素早く腕を出し、男の人の首に引っ掛けて、後ろから羽交い絞めにする。



「ぐ、ぁ……!?」



一人は宙づりに。一人は羽交い絞めに。

生吹くんの強さが尋常ではないと悟った二人は、逃げようと必死に手足をバタつかせた。

その内の一人が、口をパクパクさせている。何を言っているかと思えば、



「最強、王子……っ!」



男の人が絞り出した単語を耳にした生吹くんは「チッ」と舌打ちをした。

綺麗な顔は、不快や不満の浮かんだ表情に変わり、歪んでいる。それでも生吹くんの顔は、怖いくらいに綺麗だった。

それがまた、二人組の恐怖心を駆りたてるとも知らず。生吹くんは、二人に顔を近づけた。

そして、



「お前らの吐く汚い言葉で美月が苦しんでると思うと、反吐が出る」



そう吐き捨て、二人組に嫌悪感丸出しの瞳を向けた。