彼の存在が、自分の中で大きくなったのが分かった。

今の自分を誰かに認められるのが嬉しくて、くすぐったくて、どこか安心して。

生吹くんといると、私いつも何かを貰ってる気がするよ――



「本当にありがとう、ございますっ」

「お礼を言うのは俺の方だから。卵焼き、美味しかった。

ってか……美月は一年でしょ?
俺もだよ?」

「え?」



そうなの?
でも、すごく大人っぽく見える。



「年上だとばかり、思ってました……」

「タメだよ。だから、ほら。敬語」

「敬語?」

「ナシね。なんなら”くん”もつけないで。呼び捨てで呼んで」

「え!」



生吹くんを呼び捨て!?

それは何だか恐れ多くて、呼びにくい……。



「呼び捨ては、できません……」

「敬語」

「あ……えと……。
呼び捨ては、無理……かなっ」



手をブンブン振って拒否すると、生吹くんは目に見えて落ち込んだ。ワンちゃんの垂れた耳が、見えて来そう……。


いたたまれなくなって、少し身をかがめて上目遣いで生吹くんを見る。そして手を合わせて、



「ご、ごめんね?生吹くん」



コテンと、頭を横へ倒す。

すると生吹くんの顔に夕日が当たったみたいに……。

顔の色が、赤くなった。